被相続人の借金が多い場合になされるのが相続放棄だと書きましたが、そうではない場合もあります。
以前こういったケースがありました。被相続人には子供も配偶者もなく、ご高齢の、弟Aさん・妹Bさん・妹Cさんの、合計3名が相続人であるというケースで、財産は預貯金が6000万円ありました。単純に、それぞれの相続人には各々2000万円取得する権利があります。しかし、相続人の内、生活保護を受けている一人暮らしのBさん1名が相続放棄をするというのです。被相続人には負債はありませんので、相続放棄をしなくても、何も不利益を受けることはありません。それにも拘わらず、相続放棄の手続きをご依頼されました。
被相続人含めたBさん一家は地元では有名な資産家の一族だったそうですが、Bさんは若い時に実家を飛び出し、一族の人たちに迷惑をかけたという思いが強かったようです。Bさんの結婚した相手はDVがひどく、30代で子供たち三人を連れて逃げ出したそうです。夫につかまらないように転々と住所を変えながら暮らし、子供が独立した後はひっそりと民営団地に居住していたとのことでした。Bさんは、
「欲しいものは欲しかばってん、それ以上に私はあの家に迷惑をかけました。ですのでその財産を貰うわけにはいきません。私を探しにこらしたときはびっくりしたけど、最初っから私の意思は変わりません。」
とおっしゃっていました。
相続放棄について②
2012年8月25日 土曜日