被相続人の借金が多い場合になされるのが相続放棄だと書きましたが、そうではない場合もあります。
以前こういったケースがありました。被相続人には子供も配偶者もなく、ご高齢の、弟Aさん・妹Bさん・妹Cさんの、合計3名が相続人であるというケースで、財産は預貯金が6000万円ありました。単純に、それぞれの相続人には各々2000万円取得する権利があります。しかし、相続人の内、生活保護を受けている一人暮らしのBさん1名が相続放棄をするというのです。被相続人には負債はありませんので、相続放棄をしなくても、何も不利益を受けることはありません。それにも拘わらず、相続放棄の手続きをご依頼されました。
被相続人含めたBさん一家は地元では有名な資産家の一族だったそうですが、Bさんは若い時に実家を飛び出し、一族の人たちに迷惑をかけたという思いが強かったようです。Bさんの結婚した相手はDVがひどく、30代で子供たち三人を連れて逃げ出したそうです。夫につかまらないように転々と住所を変えながら暮らし、子供が独立した後はひっそりと民営団地に居住していたとのことでした。Bさんは、
「欲しいものは欲しかばってん、それ以上に私はあの家に迷惑をかけました。ですのでその財産を貰うわけにはいきません。私を探しにこらしたときはびっくりしたけど、最初っから私の意思は変わりません。」
とおっしゃっていました。
相続放棄について②
2012年8月25日 土曜日
相続放棄について①
2012年8月23日 木曜日
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産(マイナスの財産含む)を相続しないことをいいます。これは、相続が開始したことを知った時から三か月以内に家庭裁判所に対して申述することにより効果を生じます。
一般的に、「預金の権利は放棄する」とか、「不動産の持分は放棄する」といった使い方をされることがありますが、これらは厳密な意味での相続放棄ではないことに注意する必要があります。
繰り返しになりますが、あくまで相続放棄というのは、家庭裁判所に対して申述するもので、全ての権利義務を被相続人から承継しないというものです。なので、財産の一部を承継しないというのは、法律上の相続放棄ということにはなりません。
相続放棄は、一般的に、被相続人にプラスの財産を超えるマイナスの財産があるケースになされます。つまり、相続人が、被相続人の借金を払えない・払わない、といった場合に利用される制度です。
相続登記(不動産の名義変更)の費用について
2012年8月22日 水曜日
相続登記(不動産の名義変更)の費用について、概要を書こうと思います。
相続登記にかかる費用は、大きく、「司法書士報酬」と「実費」に分ける事ができます。
実費には、「登録免許税」や「不動産登記簿謄本取得費用」、「戸籍取得費用」が主なものとしてあげられます。登録免許税・不動産登記簿謄本取得費は法務局に納めるもので、戸籍取得費用は市区町村に納めるものです。これらの実費は、司法書士が手続きを代理しようが、個人で申請しようが、日本における不動産登記制度を利用するなら誰でも必ず支払わなければならないものになります。
一般的な相続登記の費用のうち、大きなウェイトを占めるのが、司法書士報酬と登録免許税ということになります。
登録免許税の計算の仕方は、固定資産評価額×0.4パーセントとなります。(例えば、土地建物の合計評価額が1500万円だとすれば、6万円となります。)相続人の数に関わらず、すべて土地建物等の不動産価格の評価額が基礎となります。
登録免許税の納税義務者は、登記を受けようとする者であり、通常であれば、土地建物等の不動産を取得する事となる相続人ということになります。
上記のように、登録免許税は予め国が定めた法律に従って費用を支払うことになりますが、司法書士報酬は、事務所によってかなりまちまちです。
必ず相続登記(不動産の名義変更)のお見積もりをとってもらってから、委任するようにしましょう。
日本経済新聞記事「全員遺言時代間近に 財産少なくても「争族」の恐れ」
2012年8月21日 火曜日
『全員遺言時代間近に 財産少なくても「争族」の恐れ 年代問わず準備を』
相続争いは、財産の多寡に関わらずもめにもめる場合があります。
超高齢化社会の我が国においては、次代に繋ぐ相続や遺言のスキームを構築することが肝要です。
シンポジウム『相続・遺言のススメ』に行ってきました。
2012年8月7日 火曜日
Kです。
一般市民向けのシンポジウムで、京都に行ってきました。
『相続・遺言のススメ』
一般の人にわかりやすいようにとても工夫されていました。第一部は、「NPO法人子育ては親育て」さんによる、笑いあり、涙ありの演劇で、第二部は、士業によるリレートークでした。
第一部の演劇の中にこういったくだりがありました。
遺言がなかったばっかりに、仲違いをする息子たち。亡くなったおばあちゃんは、幽霊となってでてきてこう言います。「あんたたち、ごめんね。わたしは一番大切なものを残してやる事ができなかった。一番大切なもの、それは、家族の絆。私が遺言を残さなかったばっかりに、その家族の絆を断ってしまった。ごめんね。」
このおばあちゃんのように家族の絆が断たれないためにも、何らかの形で遺言は必ず書いておくべきです。